PLOP DS で e シールを付与
2023年10月より「適格請求書等保存方式」(以下インボイス制度)が開始される予定です。インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには一定の事項を記載した適格請求書が必要になり、またこの適格請求書を電子データで交付することが可能になります。一方で、電子データの適格証明書がその法人から交付されたものであると簡便に保証する制度がないため、欧州の e シールを参考にした制度の検討が進められています。
この記事では、e シールの概要と、PLOP DS で e シールを付与する手順を説明します。
承認署名と証明用署名について
e シールの説明に入る前に、PDF 承認署名と証明用署名について説明します。一般的に電子署名といった場合は前者の承認署名を指す場合が多いですが、e シールでは後者の証明用署名を使用します。
承認署名
Adobe Acrobat の「入力と署名」ツールから行える署名で、紙文書での直筆の署名や個人印に該当します。対象になる PDF は相手側が作成し、これに署名を行うことでその内容を承認します。
証明用署名 (作成者署名)
PDF に付与する最初の署名に限り、Adobe Acrobat の「証明書」ツールから承認署名ではなく証明用署名を行うことができます。通常は PDF の作成者により証明用署名が行われるため、作成者署名とも呼ばれます。署名時にこの PDF に対して許容する変更を指定することができ、承認署名を含む一切の変更を許可しない、フォームフィールドの入力と電子署名を許可する、等が選択できます。
e シールについて
署名や押印による意思表示は自然人だけが可能で、法人が行うことはできません。これは電子署名でも同じで、法的根拠のある署名済み PDF を作成するためには、代表取締役や業務責任者等の、法人に所属する個人に紐付いた証明書を使用する必要があります。一方で、個人に紐付いた証明書を使用する場合、担当者の異動や変更の度に証明書を取り直す必要があり、手間や管理の面で問題があります。
この問題を解消するため、用途を発行元の証明と改竄の有無の確認に限定したものが e シールで、紙文書での法人角印に近いものになります。日本ではまだ検討が行われている段階ですが、法律が整備されて効力が認められれば、法人に紐づく証明書で発行元を証明できるようになります。
PLOP DS を使用した e シールの付与
ここまで記載した通り背景は複雑ですが、技術的には通常の証明用署名と変わりありません。法人に紐づく証明書が調達できたら、コマンドラインプログラムの場合は下記のコマンドで証明用署名を付与します (certification=nochanges の場合、署名を含むあらゆる変更を許可しません)。
plop --signopt "digitalid={filename=demo_signer_rsa_2048.p12} passwordfile=pw.txt certification=nochanges" --outfile output.pdf input.pdf
(Sep 25, 2020 - )