PDFlib 8 の新機能詳細
このページでは PDFlib 8 の新機能 で取り上げた PDFlib 8 の新機能の詳細を説明します。
●Acrobat 9 PDF の新機能への対応
PDFlib 8 は Acrobat 9 (PDF バージョンは 1.7 Adobe 拡張レベル 3) のさまざまな PDF の機能をサポートしています。
拡張されたグラフィックコンテンツ (参照 XObject)
PDF 文書の各ページには、他の PDF ファイルのページへの参照を含めることができ、これを、XObjects 参照と呼んでいます。本体の PDF ファイルには、プレースフォルダーとしてのみ、例えば低解像度バージョンのイメージや参照先のページ内容が失敗した場合の注意書きを含めることができます。このテクニックを使用することで(例えば、印刷物の処理など)何度も何度も繰り返し送信する必要がなくなります。XObjects 参照は、PDF/X-5g と PDF/X-5pg の重要な構成要素です。
多様化されたレイヤー
多様化されたレイヤー(レイヤーコンフィギュレーションと呼ばれます)は、レイヤーのグループと考えることができます。レイヤーのグループを作成することは、ユーザーが不注意に誤ったレイヤーのセットをアクティブにしたり、非アクティブにすることができないので、生産性の安全性を高めます(例えば、特定の言語レイヤーを有効にして、一般的な全ての言語イメージレイヤーをアクティブにし忘れるといったことが該当します)。したがって、多様化されたレイヤーは、PDF/X-4 や PDF/X-5 標準でレイヤーを使用することの基本といえます。
PDF ポートフォリオ
PDF ポートフォリオは、Acrobat 9 で便利に使用できる PDF と他の文書を一つにまとめる機能です。もし、階層的なフォルダーがアタッチメントファイルを組織化するために使用しないのであれば、PDF コレクションは、Acrobat 8 でも十分に使用できます。PDFlib は PDF ポートフォリオ内にアタッチメントファイルを容易に組織化するために定義済みやカスタムメタデータフィールドをサポートします。新しいアクションは、埋め込まれた文書のページに直接移動するブックマークを作成するのに利用できます。
地理参照付き PDF
地理参照付き PDF は、ページ全体やページ上の個別の地図のために地理参照情報を含めることができます。Acrobat 9 では、地理参照付き PDF のためにインタラクティブな様々な機能が用意されています。PDFlib は、イメージと一部または全体のページに地理参照データを割り当てるために利用できます。
256 ビット AES 暗号化とユニコードパスワード
PDFlib は、セキュリティが改善された 256 ビット AES 暗号化をサポートしています。256 ビット AES 暗号化は、Acrobat 9 で導入され、ユニコードパスワードも利用できます。
PDFlib+PDI 及び PPS による Acrobat XI までの文書の取りこみ
PDFlib+PDI および PPS は、Acrobat 4 から Acrobat XI までの PDF 文書を取り込むことができます。
●フォント制御とテキスト出力
PDFlib 8 は新しい印刷機能の数々を提供しています。
複雑用字系シェーピングと双方向組版
ラテン語などの単純用字系シェーピングは、左から右へ次々と配置されます。複雑用字系シェーピングでは、(コンテンツによって適切にグリフが選択されている)テキストを形作るために、文字の再整理、右から左へのフォーマットなど追加的な処理を必要とします。PDFlib は、アラビア語、ヘブライ語、デヴァナーガリ語、タイ語を含む様々な用字系のための出力をサポートしています。
フォールバックフォント
フォールバックフォントは、様々なフォントとエンコーディング依存制限に関連する強力なメカニズムを提供します。フォントを混ぜ合わせ、調和させ、誤ったグリフを他のフォントから引用したり、エンコーディングを拡張するなどが可能です。フォールバックフォントは、統合されたフォント内でデザインの違いと見なすことにより個々のグリフのサイズを自動的に調節することができます。
OpenType レイアウト機能
OpenType レイアウト機能は、フォントファイルに追加されたテーブルから OpenType に情報を加えます。これらのテーブルは、合字、スモールキャップ文字、飾り文字などのような印刷文字機能の表現を記述します。また、半分の幅、全幅、プロポーショナルグリフ、代替形式など拡張された CJK テキスト出力もサポートします。
文書を通じてのフォントの保持
フォントと関連するデータは、文書の作成が完了した後、メモリ上に保持することができます。これは、フォントサブセッティングのように文書特有の処理を行っている間に、次の文書のためにフォントが再度分析されることがないため、パフォーマンスを改善します。
CJK 外字のための SING フォント
日本語用外字は、一般的に利用されているカスタムキャラクタですが、エンコーディング標準には含まれていません。Adobe 社の SING フォントアーキテクチャ(グリフレット)は CJK テキストの外字問題を解決します。PDFlib は、EUDC フォント(ユーザー定義フォント)の Microsoft 社のコンセプトと同様に SING フォントをサポートします。フォールバックフォント機能を利用することで SING と EUDC フォントを既存のフォントに統合することができます。
フォントエンジンの刷新
PDFlib のフォントエンジンは、再デザインされ合理化されました。結果、多様なユニコードとエンコーディング依存の利点と一般的なパフォーマンスの向上と同様に必要なメモリの削減を実現しました。新デザインにより幾つかの制限が削除され、既存の機能性は拡張できました。例えば、Type 1 や Type 3 フォントで 256 以上のグリフを利用できるようになりました。
クリッピングされたイメージに回り込むテキスト
テキストフローのフォーマットエンジンは、任意のパスと TIFF や JPEG イメージをインポートしたクリッピングパスの周りでテキストをラップします。複数行のテキストをイメージの周りに配置することを可能にします。
パステキスト
テキストは、任意の直線セグメント、曲線、円弧の混合から構成される任意のベクトルパスに配置されます。このパスは、プログラムにより構成することが可能です。結果的に、TIFF や JPEG イメージからクリッピングパスを抽出してテキストパスとして利用することができます。
●ブロックプラグインと PPS
ブロックプラグインは PPS で利用する PDF 文書にブロックを埋め込むために使用します。
Acrobat でのブロック埋め込みプレビュー
ブロックプラグインは、Acrobat 上で直接 PPS でブロックへの差込処理のプレビューを生成できます。 即座のプレビューは、サーバー上での処理を待たずに、デザイナーに PPS によるブロック文書への差込処理結果のすばやいレビューを提供します。プレビューされた PDF ファイルには、ブックマーク、レイヤー、アノテーションといったデバック用のエラーメッセージを可能な限り含み、開発を支援します。プレビュー機能は、開発サイクルを加速し、PDFlib の機能を試すためのインタラクティブなテストフレームワークとしても利用することが可能です。
ユーザーインターフェースの刷新とスナップ・ツー・グリッド
ブロックプラグインのユーザーインターフェースは、非常に多くの既存または新しいブロックプロパティへのアクセスを容易にするために刷新されました。スナップ・ツー・グリッド機能は、デザインラスターに従ってブロックをすばやく配置することに役立ちます。
ブロックプロパティの追加
多くのブロックプロパティがブロックプラグインおよび PPS に追加されました。例えば、ブロックで配置されるテキスト、イメージ、PDF コンテンツの透過指定などがこれに当たります。
ブロックコンテナの PDF/A や PDF/X ステータスのクローン化
PDF/A や PDF/X ドキュメントベースのプレビュー生成でブロックプラグインは、例えば規格ID、アウトプットインテント、メタデータといった全ての標準に準拠した状態のクローンを作成できます。PDF/A または PDF/X のクローンモードでブロックの差込処理をする際、指定された規格に不整合が生ずる場合(例えば、文書に適切なアウトプットインテントが含まれないにもかかわらず RGB カラースペースを使用したイメージが使用される場合)、エラーメッセージが表示されます。この方法は、規格に対する内在する不整合をより早い段階で見つけることを可能にします。
ブロックによる PDFlib 8 機能の効用
コンプレックススクリプトによるテキスト出力や OpenType レイアウト機能のような PDFlib 8 の新しい機能はブロックプロパティにより直接反映することが可能です。例えばブロックは、アラビア語やヒンディー語の差込が可能です。
●その他の主要な機能
他にも、PDFlib 8 には数々の重要な新機能が含まれています。
パスオブジェクトの再利用
パスオブジェクトは、あらゆるページから独立して構成することが可能で、一度ならず何度でも書き出し、塗りつぶし、クリッピングに利用できます。また、シェープに対する回りこみ(シェープを迂回するようにテキストをフォーマットする)やパス上にテキストを配置することにも利用できます。
PDF/X-4 および PDF/X-5
PDFlib は、グラフィックデザイン業界のための PDF/X-4 や PDF/X-5 標準に対応する出力を作成します。これは、PDF/X-1 や PDF/X-3 標準と比べ新しい PDF バージョンをベースとしていて、透過やレイヤーを提供します。PDF/X-4p や PDF/X-5pg は、アウトプットインテントとして ICC プロファイルの外部参照をサポートします。PDF/X-5g や PDF/X-5pg は外部のグラフィックコンテンツの使用をサポートしています。
TIFF、PNG イメージのアルファチャンネル
PDFlib は、TIFF や PNG イメージのインポートの際、イメージの透過性(アルファチャンネル)を適用します。アルファチャンネルは、滑らかな境目の作成と背景とイメージを融合するために利用できます。
JBIG2 圧縮イメージ
JBIG2 は、モノクロイメージのためのきわめて効果的なイメージ圧縮フォーマットです。PDFlib は単一または複数ページの JBIG2 イメージを抽出し、PDF 出力の生成で圧縮の利点を維持します。
オブジェクトストリームとクロスリファレンス・ストリームの圧縮
PDFlib はオブジェクトストリームとクロスリファレンス・ストリームの圧縮を生成します。この処理は、生成された PDF 文書のファイルサイズ全体を削減し、従来のクロスリファレンステーブルを持つ PDF が抱える 10GB の限界を超える助けになります。10GB は非常に大きなデータに思えるかもしれませんが、印刷処理でアプリケーションが増えることによりこの限界に達します。我々は、PDFlib ユーザーがこの範囲の PDF 文書を作成するために多くのシナリオを検討する予定です。
PANTONE(R) Goe(TM) カラーライブラリの内蔵
PDFlib は新しい PANTONE(R) Goe(TM) カラーライブラリをサポートしています。これは、新しいカラーネーミングスキーマに適合する光沢紙またはつや消し紙のための 2058 の新色を持っています。Goe(TM) カラーライブラリは、Pantone, Inc. 社により 2008 年に紹介されました。
既存の関数に対する多様な新しい機能や改善
- PDF_info_image() 関数による詳細なイメージ情報の問合せ
- PPS およびブロックプラグイン:新しい PDFlib 機能へアクセス可能なをブロックプロパティの追加
- Unix システム上での Unicode ファイル名
- テーブルフォーマッター:テーブルセル内のパスオブジェクト、アノテーション、フォームフィールド
- テキストフロー:追加されたフォーマッティングオプション、拡張された言語特有の行末指定
- 影付きテキスト
- イメージインポート時の XMP メタデータの保持
- PDF_info_font() 関数による多くの改善
- アノテーション作成時のオプションの追加
- C++ バインディング時の文字列データタイプの指定。例えば Unicode の wstring のサポート
(注)本記事は PDFlib 社の PDFlib データシートを参考にして作成しています。
(Dec 11, 2009 - Sep 27, 2013)